フランスの南東部に位置するプロヴァンス。
プロヴァンスの西側の境界となっているローヌ川は、
内陸部と地中海都を結ぶ主要河川のひとつとして、
何世紀にも渡り、フランスの貿易や文化の橋渡しをしてきました。
プロヴァンスには、このような歴史や地理条件の下、
脈々と受け継がれてきた美しいデザインがあります。
特に、建造物や街並みは、数百年を超える経年により、
特有の深い奥行きを表出する、この地方のシンボルとなっています。
私は、これまでに何度もこの地を訪れ、
「この世界観を日本にも伝えていきたい」
と感じるようになったのです。
しかし、数百年の歳月を経て醸成された本物の風景を、
小手先の技法で再現することは到底難しいことでもあります。
試行錯誤を繰り返しながら、辿り着いたひとつの答え─。
それは、誰も気づかないような細部まで、丁寧に観察し、
正確な造形技術を磨き上げることでした。
私は、主にモルタル造形とエイジングという技法を使い、
中世のプロヴァンスのデザインを表現しています。
しかし、それは、フェイクのものづくりではなく、
プロヴァンスの歴史や世界観と誠実に向き合い、
私なりのデザインに昇華させたものでありたいと考えているのです。